過保護な御曹司とスイートライフ


成宮さんと一緒に暮らすようになってから、気付いたことがある。
それは、ケンカの種類にも色々あるということ。

私の記憶のなかの両親は、お互いの嫌な部分ばかりを怒鳴り合って否定ばかりしていたけれど。
同居生活を始めてからたまに勃発する成宮さんと私のケンカはそれとは少し違う。

『だから、大丈夫だって言ってるじゃないですか。相手はちょっと硬いだけのただの野菜ですよ』

『それがどれだけ危険かってこと、おまえはちゃんとわかってないんだよ。ゴロッといったらどうなるかわかってんのか?』

『いかないように気を付けてやりますから大丈夫です。大体、そんな危険なものだったら普通にスーパーにゴロゴロ売ってるわけないでしょ』

『ハロウィン用なんじゃねーの』
『……野菜にも賞味期限があるって知ってますか? ハロウィンまで何ヵ月あると思ってるんですか』

一度、野菜やまるごと胸肉の牛乳煮込みという、やたらシャバシャバした食事を作ってくれて以来、成宮さんはカボチャの皮の厚さに驚いたらしい。

こんな硬いものを包丁で切るなんて危ないって、私が切ろうとしているところを見るなりカボチャを取り上げられてしまった。

そのあとも言い合いは止まらず、カボチャの奪い合いになって……結局、タイミングよく訪ねてきた慶介さんに切らせることになったりして、あの時は大騒ぎだった。

『ちょ、え、硬くね? これは、どうやって……あ、あ、イケそう! 見て、イケそう!』

イケそうってより、普通にイケる。
ただの野菜なんだから、刃物に敵うわけがない。



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