ロング・バケーション
「……ちょっと早まったかなと思った。凛を怖がらせたなと思うと申し訳なくて……」


「えっ!?」


甘みを口に残したまま振り返る。
凛と呼び捨てられたことよりも、彼の言葉に耳を疑っていた。

照れくさそうな表情をしている彼は、その眼差しを私に向けてきた。


「震えてただろ。いきなりがっついてしまったから怖かったのかなと思った」


悪い…と話す彼にぼうっとして、「いいえ」も「うん」も言えずにいると、彼は箸を置き、きちんと私の方に向き直って頭を下げた。


「ごめん。今朝は君と同じで顔を合わせづらいなと考えてただけなんだ」


挨拶はしないと…と思ったらしい。
けれど、自分の前にいる青木さんがそれをさせないように言葉を先走り、言い出せなかった…と話した。


「これは間違いなく言い訳にしか過ぎないんだけど」


顔を伏せたまま掌を膝の上で握る彼。
私はさっき怒りを彼にぶちまけてしまったことを思い出して、やっと声が出せた。


「あ…やまらないで下さい。私も申し訳なかったと思うし」


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