ロング・バケーション
情けないよな…と漏らす声に苦笑してしまいそうになるが、自分もそう言われると何だか目頭が潤んできて、声も出せずに息だけ吐いた__。


「凜……固まった?」


恐々と顔を覗かせる彼に首を振る。
目線を向けると彼の表情が歪み、それを見ている視界がぼやけた。


「何で泣いてるんでしょうね。私…」


中学生の告白でもないに…と思う。
だけど、恋愛オンチな自分が初めて好きになった人に自分の気持ちを話したのだ。



「凜…」


彼の声に、はい…と返事をする前に唇が重なる。

鮭の香りと出汁の香りに包まれてしたキスは、今までのものとは全く意味が違う気がした。



「好きだ。誰よりも一番」


ぎゅっと抱き締められて告げられた言葉を私は胸の奥に焼き付ける。


遊び人で誰とでも寝ると称されてきたドクターとの夜は熱く、私に最高のときめきを教えてくれた___。



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