ロング・バケーション
当番医を代わり、自分が夕方まで居ようと言ったらしい。
優しいよね、と話す主任に同意しながら、自分の仕事が終わるまで待つと言った彼の言葉に胸が鳴った。


自分とは違い、恋愛に関しては百戦錬磨の城島ドクター。
流石に女心を掴むのが上手いなと感じながら仕事をこなし、昼食休憩で社員食堂へ向かった時だ。


いつもの様に麺類の中から日替わりパスタを選んだ。
今日のパスタはカルボナーラで、コンソメとミニサラダが付いてくる。


厨房の中にいるおばちゃんに食券を渡し、トレイの上にパスタとスープとサラダを乗せてもらってホールの方へと振り返った。


土曜日の後半の休憩時間だからか利用している人は疎らだ。

ゆったりと座れそうなくらいに席が空いているのに、中にはやたらと密着しているカップルがいるな…と思い、ちらっと視線を走らせた。



(えっ……まさか城島先生……?)


目を疑いながらも確信に近い気持ちで近付く。
くっ付いて話す二人の背後の席に座り、じっと見つめながら窺っていた。


白衣を脱いでスーツの上着を着ているが間違いない。

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