ロング・バケーション
タジタジしながら後ろにずり下がろうとする私を彼の腕が背中に回り込んで止める。
「逃げないで見せる」
「本当にもう、大丈夫ですから」
人参は既に噛んで飲み込んだ。
熱かったのも一瞬だけで、今は別の意味で体が熱い。
「ちぇっ、つまらない」
そう言うと悔しそうに私から離れていく。
私の手から取り皿を受け取り、中のホタテを美味しそうにパクついた。
「…しかし、この鍋は豪勢だなぁ……」
ブリにホタテにエビにカニ。
海鮮鍋かと思わせておきながら、実は牛肉まで入っている。
「実家の母が何でも持って帰ればいいと言ったので」
「凛さん家ってやっぱり普通の家庭じゃないよね」
「えっ?」
「だって、普通の家庭にはこれだけの食材が冷蔵庫にはないよ」
「そうなんですか?」
「ほら、そう言うところも庶民離れしてるし」
「うちは庶民ですよ」
「俺から見ると庶民よりはかなり上級そうに思えるんだけどな」
自分の実家が庶民かそうでないかなんて、別にどうでもいいことだ。
私の父は間違いなくサラリーマンだし、母はパートで働く兼業主婦だ。
「逃げないで見せる」
「本当にもう、大丈夫ですから」
人参は既に噛んで飲み込んだ。
熱かったのも一瞬だけで、今は別の意味で体が熱い。
「ちぇっ、つまらない」
そう言うと悔しそうに私から離れていく。
私の手から取り皿を受け取り、中のホタテを美味しそうにパクついた。
「…しかし、この鍋は豪勢だなぁ……」
ブリにホタテにエビにカニ。
海鮮鍋かと思わせておきながら、実は牛肉まで入っている。
「実家の母が何でも持って帰ればいいと言ったので」
「凛さん家ってやっぱり普通の家庭じゃないよね」
「えっ?」
「だって、普通の家庭にはこれだけの食材が冷蔵庫にはないよ」
「そうなんですか?」
「ほら、そう言うところも庶民離れしてるし」
「うちは庶民ですよ」
「俺から見ると庶民よりはかなり上級そうに思えるんだけどな」
自分の実家が庶民かそうでないかなんて、別にどうでもいいことだ。
私の父は間違いなくサラリーマンだし、母はパートで働く兼業主婦だ。