美意識革命
「ありがとう、ございます。」
「どういたしまして。」
森の笑顔はなぜか落ち着く。元カレに似ているわけでもないのに。それに、本来こんな風に何かをもらう仲でもない。
「森さん、律儀ですね。」
「え?」
「これ、くれるときだけこっち向いて、そうじゃないとすぐ前見てくれて。」
「九条さんがそうしてって言ったじゃないですか。」
「いやまあ…そうなんですけど。もう大丈夫です。なんか、こうして話をしているのに相手の方を向かないっていうのも変な話じゃないですか?」
「はは、そうですね。僕も割と相手のことを見て話すタイプです。」
「そんな感じがします。」
苦しくて泣きそうで(実際ちょっと泣いてしまった)、そんな重たい気持ちを抱えていたのは嘘じゃないのに、こんな風にすらすらと会話ができてしまっているこの時間も嘘じゃない。
由梨はもらったペットボトルを開け、一口飲んだ。
「ちゃんと水分補給はしていますか?」
「もちろんですよ!ちゃんと飲んでます。」
「よかった。たまに水分が足りなくてふらついちゃう人とかいるんですよ。」
「えーそうなんですか。」
「まあでも、九条さんはしっかりしていそうなので、そういうミスはないですかね。」
「私、しっかりしているように見えますか?」
「…なんとなく、ですけどね。」
ふと、元カレのことが頭をよぎった。そういえば、色々なことの決定権は自分にあったような気がする。
(由梨の方がしっかりしているから、由梨が選んだ方がいいとかなんとか言われていたっけ。)
思い出してしまうとダメだ。全然思い出になってくれない。現在進行形でただ心を抉ってくるだけのものになっている。
「…しっかりしてる女って可愛げないんでしょうね、きっと。」
「え?」
森に話すような内容ではないことは由梨にもわかっていた。だが、由梨の味方でも敵でもない、第三者の考えを聞きたくなった。女同士の話し合いは感情的になってしまう。そうではない会話がしたかった。
「どういたしまして。」
森の笑顔はなぜか落ち着く。元カレに似ているわけでもないのに。それに、本来こんな風に何かをもらう仲でもない。
「森さん、律儀ですね。」
「え?」
「これ、くれるときだけこっち向いて、そうじゃないとすぐ前見てくれて。」
「九条さんがそうしてって言ったじゃないですか。」
「いやまあ…そうなんですけど。もう大丈夫です。なんか、こうして話をしているのに相手の方を向かないっていうのも変な話じゃないですか?」
「はは、そうですね。僕も割と相手のことを見て話すタイプです。」
「そんな感じがします。」
苦しくて泣きそうで(実際ちょっと泣いてしまった)、そんな重たい気持ちを抱えていたのは嘘じゃないのに、こんな風にすらすらと会話ができてしまっているこの時間も嘘じゃない。
由梨はもらったペットボトルを開け、一口飲んだ。
「ちゃんと水分補給はしていますか?」
「もちろんですよ!ちゃんと飲んでます。」
「よかった。たまに水分が足りなくてふらついちゃう人とかいるんですよ。」
「えーそうなんですか。」
「まあでも、九条さんはしっかりしていそうなので、そういうミスはないですかね。」
「私、しっかりしているように見えますか?」
「…なんとなく、ですけどね。」
ふと、元カレのことが頭をよぎった。そういえば、色々なことの決定権は自分にあったような気がする。
(由梨の方がしっかりしているから、由梨が選んだ方がいいとかなんとか言われていたっけ。)
思い出してしまうとダメだ。全然思い出になってくれない。現在進行形でただ心を抉ってくるだけのものになっている。
「…しっかりしてる女って可愛げないんでしょうね、きっと。」
「え?」
森に話すような内容ではないことは由梨にもわかっていた。だが、由梨の味方でも敵でもない、第三者の考えを聞きたくなった。女同士の話し合いは感情的になってしまう。そうではない会話がしたかった。