午後4時30分 有馬先輩の秘密の彼女
「…なぁ、なんで来たの?」

「先生から預かったプリントを届けに。…ってのは口実で、心配だったんですよ。この間先輩、ほぼ一人暮らしって言ってたじゃないですか」



私はビニールをあさる手を止めずに先輩と会話をした。

冷却シート…冷却シート…



「住所は?」

「それは陽先輩から。だって有馬先輩、連絡先教えてくれなかったし」



まぁ、こんな気持ち先輩は分かってくれないだろう。


一方通行な想いとはいえ、一応恋人なんだけどな…

なんて口を尖らせていると、先輩は寝返りをうってこっちを向いた。



「…不満そうな顔してるけど、お前は俺に連絡先教えろなんて一言もいったことないからな」

「いいましたよ!!もちろん!!…もちろん…」


あったっけ…?


頭の中の先輩との出来事を思い出していくけど、それらしい思い出はなかった。



私…連絡先きいたことなかった!?



「…彼氏の連絡先は知らないくせに陽の連絡先は知ってるんだ?」

「ち、ちがっ…陽先輩は勝手にやったんですよ!!」



そんなまさか…連絡先きいたことなかったなんて…



「…ほら、スマホよこせ」

「…ごめんなさい」



私がスマホを手渡すと、先輩は寝転んだまま自分のスマホと私のスマホにお互いの連絡先を登録してくれた。



「…ん」

「ありがとうございます」

「…で、冷却シートは?」

「あぁ…」



私は先輩から返されたスマホを机に置き、再びビニール袋をガサゴソとあさった。



いつも思うけど、ダメな彼女だなぁ、私。

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