嫌われ者の怪物と空っぽの少女


思わず夕飯の用意をしていた手が止まり、母の方へ目を向ける。



「……なんでもないわよ。このこと、他の誰かに言ったら殺すからね。」


「…………はい」





食べ終えた皿の片付けを終え、自室の冷たい床に寝転がる。



「いけ…にえ……初めて聞いた……なんだろう。私がいけにえ……?」



しばらく考え込み、はっとする。



そういえばおばあさんと住んでいた頃、おばあさんが自室で、「なぜマユなの…マユだけは幸せになって……どうか村の人達に見つからないように…」



と言ってつぶやいていた。いけにえは、見つかってはいけないものなのか。私は人に見つかってはいけないのか。そう考え込んだ。



では、私はおばあさんが倒れた時、どうしたら良かったのか。


今まで、おばあさんに大変な思いをさせていたのではないか。



この先私はどうなるのか。



激しい自己嫌悪と、罪悪感で心が染められた


「おばあさん……ごめんなさい…………」



涙が溢れる。大粒の涙が、冷たい床を濡らした。



窓から漏れる夕日が濡れた床を照らし、キラキラと輝いていた。
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