溺愛同棲~イケメン社長に一途に愛される毎日です~
 考えてみたことがなかった。いろんなジャムで食べるのが椿は好きだったからだ。

「わたしはその日の気分でジャムを選ぶのがすごく楽しみで、いくつも買ってきて封をあけるものだから、叔母に贅沢だってよく叱られました。これからはわたしもパンの味をしっかり味わうようにします」

「いやいや、椿の好きなようにしたらいいんだ。冷蔵庫にジャムがぎっしりになっても僕はかまわないよ」

「それ、わたしがイヤです」

「あれ」

 二人同時に「あはは」と笑い出す。それからまた朝食を口にするが、椿はこののどかな朝に言葉にできない幸福を感じた。

(匠さんと日曜日の朝からこうやってのんびり朝ご飯を食べて・・信じられない。でも、リラックスした匠さん、すっごく素敵・・)

 涼しそうなブルーのサマーセーターを一枚着ているだけの姿がとても爽やかで似合っている。何気ない仕草の一つ一つが洗練されていて、大人の男の色気を感じ、椿はその都度ドキドキしてしまって緊張の連続だ。

「今日も出かけるよ」

「出かける? どこへ?」

「椿が不便を感じないように、必要なものを揃えたい」

「不便? ・・思い当たらないですけど」

「そうかな? もう一度、ショッピングセンターを見て回ったら、いろいろ見つかると思うけど。昨日はほら、必要なものを狙って買いに行ったから、他のものってあまり意識しなかっただろ?」

 でも、と思うものの、きっと真壁は理屈なしに出かけたいのだ。不要な反論などせず、はいはい、と従うことが一番いいと思う。

「わかりました」

< 93 / 186 >

この作品をシェア

pagetop