忘れて、思い出して、知る
「……すみません、私、警視長の実績知らないです。捜査しているところ、見たことないですし」
沙也加は閃いたような顔をした。
「そっか。でも、ハル君には負けるよ。あの冷静で的確な指示。彼はいい刑事になる気がする」
「でも私は、あんな上司持ちたくないです」
「どうして?」
「普段はそんなにしゃべらないくせに、事件となると鬼のようにひどいんですよ」
栞は頬をふくらませる。
「それは、自分の仕事に誇りを持ってるってことだと思うけどな」
「だとしても、真瀬さんは絶対に鬼上司って呼ばれるようになりますよ」
栞の不満を聞いた沙也加は、ふき出した。
「面白いとこ、ありました?」
栞は笑われて不服そうにする。
「いや、栞ちゃん、八課のメンバーのこと、大好きなんだなーって思って」
「そ、そんなこと……」
栞は頬を赤らめながら言った。
「栞ちゃんは照れ屋さんね」
「からかわないでください。さ、乗ってください。寺崎大地のところに行きますよ」