忘れて、思い出して、知る


「……すみません、私、警視長の実績知らないです。捜査しているところ、見たことないですし」



沙也加は閃いたような顔をした。



「そっか。でも、ハル君には負けるよ。あの冷静で的確な指示。彼はいい刑事になる気がする」


「でも私は、あんな上司持ちたくないです」


「どうして?」


「普段はそんなにしゃべらないくせに、事件となると鬼のようにひどいんですよ」



栞は頬をふくらませる。



「それは、自分の仕事に誇りを持ってるってことだと思うけどな」


「だとしても、真瀬さんは絶対に鬼上司って呼ばれるようになりますよ」



栞の不満を聞いた沙也加は、ふき出した。



「面白いとこ、ありました?」



栞は笑われて不服そうにする。



「いや、栞ちゃん、八課のメンバーのこと、大好きなんだなーって思って」


「そ、そんなこと……」



栞は頬を赤らめながら言った。



「栞ちゃんは照れ屋さんね」


「からかわないでください。さ、乗ってください。寺崎大地のところに行きますよ」

< 73 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop