人面瘡
あの時普段と違うことをしたとすれば、それは沙和から聞いたジンクスだった。


あたしはジンクスのことを知らなかったから、飛びつくようにして実践した。


「ジンクスってなんだ?」


雄生の言葉にあたしはあの日の出来事をすべて話して聞かせた。


ジンクスで雄生との距離を縮めようとしたなんて恥ずかしい話だったけれど、今は隠している場合ではない。


話し終えた後、雄生は難しそうな顔になった。


「そんなジンクス1度も聞いたことがないな」


「あたしも、あの日初めて聞いた」


「ジンクスってだいたいがどこかで聞いたことのあるような話のはずなのにな」


雄生は何か気にかかることがあるようで、スマホを取り出してジンクスについて調べ始めた。


「だけど、あのジンクスは問題ないと思うよ。沙和が教えてくれたんだし、雄生ともこうして仲良くなれたんだし」


「そういう思い込みはよくないぞ」


あたしの言葉を一括してしまった雄生。
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