人面瘡
そう言うと、雄生はそのままジュースを取りに向かった。


こうして2人でファミレスにいると本当にカップルなんだと実感できて、なんだかくすぐったい。


沙和からジンクスを教えてもらうまでは、こんな風になれるなんて思ってもいなかった。


「アズサ、これからどこに行きたい?」


戻って来た雄生にそう聞かれて、あたしは考えた。


これと言って行きたい場所はなくて、雄生と2人でいられればそれでよかった。


それは雄生も同じだったみたいで、とりあえずブラブラ歩いてみることになった。


歩きなれた街並みも、雄生と2人で歩くと少し違って見える。


いつもよりキラキラと輝いていて、どんな物でも話題になる。


駐車場で寝ている猫を撫でたり、小川で小魚の数を数えたり。


どうってことのない日常が何倍にも楽しくなるから、不思議だった。


散々歩いて疲れて再びファミレスに入った時だった。


座った瞬間自分の右膝が目に入った。


今朝までは本当に綺麗だった右膝に、凹凸ができている。
< 81 / 204 >

この作品をシェア

pagetop