人面瘡
「え……?」


あたしは驚いて膝の表面を指先で撫でてみた。


皮が分厚くなっていて、撫でている感覚がない。


それはまるであの顔が出てきた時と同じような感覚だった。


途端に背筋がゾッと寒くなる。


まさか、また……?


「どうしたアズサ?」


目の前の雄生にそう声をかけられて、ハッと我に返った。


膝から手を離し「なんでもないよ」と、ほほ笑む。


大丈夫。


きっとあたしの勘違いだ。


このデートを壊したくなくて、あたしは自分自身にそう言い聞かせたのだった。

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