人面瘡
このまま自分の体を乗っ取られてしまうのではないかという、意味もない恐怖心が湧き上がっている。


「薬で殺す事ができるなら……」


あたしはそう呟いた。


妖怪の話しだって作り物なのだから、退治する方法だってきっと作り物だろう。


それでも、なにかしていないと落ち着かなかった。


あたしは両親を起こさないよう、そっとリビングへと入った。


救急箱を開けると痛み止めや風邪薬が入れられている。


どれがいいだろうか?


そう思った時、病院で処方してもらっていた抗生物質の薬が目に入った。


体の中の菌を取り除いてくれる薬。


菌とは少し違うかもしれないけれど、異物であることは確かだった。


あたしは薬の袋を握りしめて自分の部屋へと戻ったのだった。
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