極甘ウエディング~ようこそ俺の花嫁さん~


熱海旅行のあと、慶太さんは関西の式場へと出張に出掛けていた。

そのために一週間丸々会っていなかったわけだけれど、慶太さんはその間毎日電話をかけてきてくれていた。

電話で話す慶太さんの声は、隣で聴くよりも落ち着いていて美声で、毎回なんだかドキドキさせられた。

『毎日は大変だから大丈夫ですよ』と、忙しい中わざわざ電話をかけてきてくれることを遠慮もしたけれど、そんなことを言いつつ一週間の後半には電話をもらえることを心待ちにしている自分がいた。


「本日はご足労いただきまして、ありがとうございます」


私たちの目の前までやってきた慶太さんは、澄子叔母さんに丁寧な挨拶をする。

澄子叔母さんは「いえ、こちらこそありがとうございます」と慌てた様子で頭を下げていた。

慶太さんに促されて中へと入ると、着物を着た仲居の女性が部屋へと案内をしてくれる。

個室と思われる部屋の前まで行くと、澄子叔母さんは先に御手洗いに行ってくると仲居さんと共にその場を離れていった。

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