泥沼!? 夢見るオトメの恋愛事情【完】
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「静月ちゃん、お待たせー。 うわ」


静月ちゃんは、私の部活の終わりまで、図書室で待ってくれている。


「いいところだから、もうちょっと」


お嬢様は、どうやら、物語のクライマックスのようで、一心不乱にページをめくっておられた。


それより。
先ほど「うわ」と言ったのは他でもない、勢揃いしていたからだ。



ルックスのいい伊集宮先輩も、


いい人どまりの円藤パイセンも、


硬派な司先輩も、


ファンクラブの怖い岸くんも、


エロ残念な橘も、




しかも彼らは、どういうわけか、いつも静月ちゃんと同じ机で、それぞれ行動をしている。


そこに、夕方のオレンジがさしこんで、なかなか絵になる風景だった。


私は、彼らを陰でひっそりと『円卓の美男子』と、呼んでいる。



静月ちゃんと岸ファンクラブの争いは、
まぁ、最初はあったけど、

結局、

『あなたが好きな人を、なんで私も好きになると言い切れるのか。 なら、私の好きなイナゴのつくだ煮を、あなたは好きになれるんでしょ?』

ファンクラブの子達に、イナゴをご馳走して、ハッピーエンドとなったのだ。

泣くわ、吐くわの阿鼻叫喚を、私は、忘れ、ない。



事実、恋愛感情がないというか、

円卓の美男子たちにニコリともしないツンドラ姫っぷりなので、ファンの誤解が溶けるのも最初から時間の問題だったのだが。


「お、ユメじゃん。 部活おつー。 なんか、部活終わりの女子ってエロいね」

手をひらひらと、させながら、

イスを傾けて、後ろの2本の脚でバランスをとる行儀の悪い奴が話しかけてきた。


さすが、Mr.性欲こと、橘だ。

自分のキャラクタを忘れていない。


「こら、橘。 なんてことを」

もちろん、それをたしなめるのは、この人。

いい人代表、円藤パイセン。


「でも、部活女子が魅力的ってことには、俺は賛成かな」

と色男・伊集宮先輩が続く。


「・・・・なに口説いてんだよ」

硬派な司先輩が、伊集宮先輩をこづく。


「ユメちゃんが魅力的ってとこには、さんせー」

無邪気に岸くんが続くが、ファンクラブに聞かれでもしたら、私は、殺されてしまうのではと、ハラハラしてしまう。



「はぁ、どうも」


このまま会話をしていると、本当に殺されかねないし、静月ちゃんの読書の邪魔になるので、私は、なにか本を探すことにした。



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