幸せを探して
箒を用具入れに入れている私にメガリが囁く。


「今の話、内緒で」


私が頷いた時には、メガリはいつもの様に岡本とつるんでいた。


(すばしっこいなあ…)


私は、ぼんやりとそんなことを考える。


教室に入って来た斎藤君は、いつもの様に明るく皆と接していた。


身体が弱い、とか、体調不良等を思わせる行動は微塵も見られなかった。


後から教室にスキップで入って来た陸人とも、時折笑いながら話を弾ませている。



(あの斎藤君に隠し事があるなんて、ありえない)


(あれほど元気そうなのに、体育を見学しているなんて…)


もう関わらないと決めているはずなのに。


私の心には、疑問が生まれるばかりだった。



「今度の土曜日、空いてる?」


掃除が終わり、斎藤君が陸人に話し掛けている。


「お、何で?」


陸人はリュックを肩に掛けて振り向く。


「もし高橋が花言葉分かるんなら、花を買いたくてさ」


「花言葉?俺を舐めるなよ、その気になれば何百と言えるぜ」


陸人がここぞとばかりに胸を張る。


「じゃあ、決まりで。花買いに行くから忘れるなよ」


「…俺は忘れねえよ」


陸人は少し自虐的に笑う。
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