別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー
「お願い。今日は帰るから…病院もちゃんと行くから。
心配しないで、秋は仕事して」

俯いた私の目からは今にも涙が零れ落ちそうで、ぐっと歯を食いしばった。

ここで泣いたら、ますます秋に心配をかける。

「お願い…」

もう一度絞るような声で呟いたら、少しの沈黙の後ため息の音が聞こえて、秋は静かに踵を返して廊下を戻って行った。

…怒ったのかな。

呆れられたかな。

愛想をつかされたかな。

ううん、それでいいんだ。

そうじゃなきゃいけないんだ。


秋の言う通り、午後は早退して近所の病院へ行った。

「胃炎ですね」

やっぱりな…と思いながらも、胃薬を処方してもらった。

帰りにコンビニでおにぎりやパンを買い込み、胃薬を飲んでからなんとかおにぎりを半分たべて、いつものようにローソファに横になった。

『病院行って来たか?』

夕方、秋からラインがきた。

『行ってきたよ。ちょっと胃炎起こしてたみたい。
薬もらったから大丈夫』

ニコニコマークのスタンプをつけて明るく装う。

『そっか。よかった。
今日は忙しくて寄れない。ごめんな』

…怒ってないのかな。

ホッとしてしまう自分が嫌になる。

この期に及んで期待すべきことなんて何もないのに。


秋にはあんなに素敵な婚約者がいる。

きっと幸せな未来が待っている。

私はもう秋のそばには必要ないのだ。

いい加減吹っ切って強くならなきゃ。

秋に心配をかけたままさよならなんてできない。

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