別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー
――プルルル プルルル 

ハッとして、慌ててスマホを落としそうになりながら画面を見た。

だけど、それは加奈からじゃなくて瑞樹からだった。

そうだ。瑞樹と約束をしているんだった。

「もしもし」

『もしもし?おせーぞ。早く来いよ』

「ああごめん…すぐ行く」

正直そんな気分じゃない。

だけど、ひとりでこの状況を抱え込むのは到底無理そうで、瑞樹に話を聞いてもらおうと思った。

椅子にもたれてコーヒーを飲んでいた瑞樹が、俺を見るなり困惑の表情を浮かべて身体を起こした。

「なに青い顔してんだよ」

青い顔してるか?

そうかもしれないな。なんとなく自覚はある。

それを言葉にすることもできなくて、倒れ込むように瑞樹の向かいに座った。

「…おい。何があった?どうしたんだよ」

「…別れようって言われた」

「え?」

瑞樹の素っ頓狂な声のあと、しばらく沈黙が続いた。


< 141 / 179 >

この作品をシェア

pagetop