別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー
「ご注文はお決まりですか?」

伝票を持ってやってきた店員が問いかける。

呆然としている俺の代わりに、瑞樹は「アメリカンで」と答えた。

店員が去っていくのを見送り、瑞樹はテーブルに肘をついて身を乗り出した。

「それいつの話?」

「ついさっき」

「理由は?」

「…わからない」

わからない。何も。


"私のこと、愛してる?"


昨夜は驚いた。

愛してる?なんて、加奈は聞いたことがない。

『好きだよ』は言えても『愛してる』という言葉は照れくさくて、付き合ってから一度も言ったことがない。

年月が経てば経つほど余計に言うのが恥ずかしくて、だけど、言わなくてもわかってくれていると思っていた。


"愛してるよ"


言葉にしたら、加奈が幸せそうに微笑んで、俺の背を強く抱きしめた。

ああ、本当は待っていたのかもしれない。

もっと早く言ってやればよかった、と思った。

これからはもっと言葉にして伝えよう、と。

なのに、なんで…


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