《クールな彼は欲しがり屋》
いや、ないない。

この人、かなり毒をはくし、自信家だし、それに....。

沢田課長の査定していたら、本人が急に私に向いた。

「よし、わかった。こうして、再会したのが元々出来すぎたあり得ない話だ。そう、あり得ない。今から頭の中を切り替える作業をする。あんたとは今日初めて会った。あの夜の女と目の前にいる女は全然違う。そう思えばリベンジしなくてすむ」
私に話すと言うより、自分に言い聞かせている雰囲気だ。

「はぃ?あのどういう意味ですか?」

「記憶をすり替えた。あの夜の女とは、あれから会っていない。多少気持ち悪さが残るが仕方ない。リベンジ出来ないよりましだ。あんたとは、今日初めて会ったことに記憶をすり替えた。従って、あんたもあの夜のことは今後一切口にするな、いいな」
一方的にまくし立て沢田課長はスツールから降りた。

「お開きだ。今日は、もう帰れ」
沢田課長はバーテンを呼び素早く会計を済ませる。

預けたコートを返してもらうのを待つ間、沢田課長は私と目を合わせなかった。

私を視野に入れないようにしてるのか、ずっと反対方向を向いている。

「沢田課長、私が課長に返さなきゃならないものってなんですか?」

「それは、もう必要ない。あんたは、あの夜の女とは別人だったんだから」

なんだか、良くわからない。
今度は、こっちが気持ち悪い感じになってきた。

謎がとけないまま、いきなり暗いトンネルから何も持たずに外へ出された感じだ。

しっくり来ないが、仕方がない。
沢田課長の気持ちもわからないわけではないからだ。
いつも途中で終わったことのないきちんとした性格の人ならば、きっといままでモヤモヤしていたはずだから。
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