《クールな彼は欲しがり屋》

「好きだ。ずっと大切にする」
ぎゅっと抱きしめられ、耳元で言われた。

「沢田課長....」

沢田課長の背中に手をまわしてみて、初めて男性の背中の広さを知れた気がした。

「あー、やっぱりさ俺のリベンジも今日に前倒ししよう」
私の身体を抱く沢田課長の指先に力が入った。

「しませんよ。でも、沢田課長予定が今年は、ぎっしりなんですよね?」

「ああ、俺のスケジュールは来年も真っ黒だ」
来年も?

忙しい人なんだなぁ。

「じゃあ......」
私とあってリベンジする時間もないってことね。

少し残念に思えた。

沢田課長は、ひとつ咳払いをして見せたあと、
「俺のスケジュールは、慶子と会う予定があって毎日忙しい」
と、堂々と言ってみせた。


「へ?」

「俺のスケジュールは、慶子のために毎日使うつもりで空けてあるって意味だ。すぐにわかれ」

「そういう意味ですか。わかりにくいですよ」

「だから、慶子のGo サインが出れば、俺はいつでもリベンジにいける。大丈夫だ。心配ない」
何が大丈夫なんだろ。安請け合いすぎる。

「大丈夫だって言われても」

私から離れて沢田課長は、椅子へ座った。
「慶子、お腹空いたな、早いとこすき焼き食おう」
グツグツいい始めたすき焼きの鍋。

「今日は、リベンジするつもりないから安心してすき焼きをゆっくり食べろ」

「はあ、わかりました」

後ろを向いてブラウスのボタンを慌てて閉めていたとき、
沢田課長が呟いた。

「デジャブかと思った。今つけてる奴、一年前と同じ下着だろ?」

え?
はだけたブラウスから覗いた薄いレモンイエローのブラジャー。
確かに一年以上前に買ったものだ。

一年前の夜に私がつけていた下着を覚えてるなんて、嘘でしょ!
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