《クールな彼は欲しがり屋》
くしくも、クリスマスイブは平日でお互いに仕事だ。
それでも会社で顔を合わせられて嬉しい。
私と目が合うとクールな表情を崩さないものの口角を上げてくれる健太郎。
「今夜は、沢田課長とお泊まり?」
隣の席にいる佐野さんが聞いてきた。
「お泊まり?!えっと、ま、まあ、はい」
正直にいうことがいいのかわからなかった。だが、私たちの関係は既に会社中に知れている。
「いいわね。私なんか....」
ため息をつく佐野さん。
「佐野さん?」
「ん?ああ、うん。なんでもないの」
「そうですか?」
「今日は沢田課長にうんと甘えて、素敵なイブを過ごしてね」
「素敵なイブ....」
どうすれば素敵なイブになるのだろう。恋愛マラソン初心者の私には、難しいことばかりだ。
恋愛マラソン、急カーブの手前で私は先の見えない道に躊躇し失速していた。