イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
先を歩く拓海の後ろをついて玄関に向かっていると、拓海が足を止めた。
どうしたんだろう、と顔をあげると拓海がこちらを見ていた。
「冗談だから」
短く言われ、首をかしげる。
「なにが?」
「さっきの、本命のこと忘れろとか……」
言いづらそうな拓海の表情に、「ああ!」とわざと明るい声を出した。
「わ、わかってるよ。また私をからかっただけだよね? 真に受けて本気で抵抗する私を見ておもしろがってただけなんでしょう?」
無理やりにおどけてみせると、拓海が眉をひそめた。
「からかったわけじゃねぇけど……」
いつもははっきりとものを言う拓海が、めずらしく言葉を濁す。
いったいどうしたんだろうと首をかしげて見守っていると、大きなため息をついた。
「まぁ、いいや」
なにかを諦めたようにそうつぶやく。
「もう本命を忘れろとか言わないから、来週も飯作りに来いよ」
ぽん、と頭をなでられ、胸が締め付けられた。
来週もまたここに来られることが、嬉しくて仕方ない。
あぁもう、いやになるくらい、拓海のことが好きなんだと実感してしまった。