イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
 

信じられなくて目を見張る私の前で、拓海はニンジンを掴み口に放り込む。
ガリ、と音をたてて奥歯でかみ砕くと、続いてこげ茶色の豚肉。

「うわ、ニンジンも豚肉もかてぇ。しかも酢が多すぎてむせそう」

拓海は心底まずそうに整った顔を歪める。だけど、箸を持つ手を止めることはない。

「お前、米のとぎ方も知らないだろ。力任せに研ぐから米の粒が砕けて食感ぐちゃぐちゃ」

拓海は酢豚の味を誤魔化すように口にご飯を詰め込んで、また顔をしかめる。

まさか、こんなひどい料理を食べてくれるなんて思わなかった。

ばくばくと箸を進める拓海を呆然と眺めていると、拓海がいつまでも動かない私をちらりと見て首をかしげる。

「どうした?」

その問いかけに、戸惑いながら口を開いた。

「なんで食べてくれるの? 拓海、酢豚大嫌いだったのに……」

学校の給食でも酢豚は絶対に残してた。
『晩御飯なにがいい?』って聞かれれば、迷わず『酢豚以外』と答えていた。

そんな拓海がなんで。


 
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