イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
「やっぱり、俺が酢豚を嫌いだってしっててわざと作ったんだな」
箸とごはん茶碗を持った拓海が、こちらを睨む。
「う……っ」
しまった。作戦を自ら暴露してしまった。
「ご、ごめんなさい……」
後ろめたさと気まずさに、ずれた眼鏡を直すふりをして目元を隠す。
指の間から拓海の表情を伺うと、拓海は大きなため息をついて肩を下ろした。
持っていた茶碗と箸を置き、こちらに手を伸ばす。
わざと嫌いな物を作るなんて陰湿な嫌がらせをしたんだから、げんこつくらいは仕方ない。
なんて覚悟して身構えると、ぽんと頭に手が置かれた。
そのままぐりぐりと頭を撫でられる。
「悪いと思うなら、次はもうちょっとましな料理作れよ」
「へ……?」
次があるの?
愛想をつかして『もう来るな』って言わないの?
予想外の言葉に、おどろいて眼鏡がずり落ちる。
パチパチと瞬きをしていると、拓海はまたしかめっつらで酢豚に箸を伸ばした。
どうしてかわからないけど、頭に血が上ってくらくらする。