イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
 





「送ってく」

食事を終え、ふたりで食器やお鍋を片付けた後、拓海は当然のように車の鍵を持った。

「え、いいよ。電車で帰るよ」

拓海の家から私の実家までは、電車で二十分もかからないし、わざわざ送ってもらわなくたって、ひとりでちゃんと帰れる。

首を振って断ったけれど、拓海は人の話を聞かずにジャケットを羽織った。

「あの家、駅から少し歩くだろ」

確かに歩くけど、そんなの毎日のことだから慣れてるのに。
車で送ると言ってきかない頑固な拓海に首をかしげながらも、ありがたくお願いすることにする。

タイヤの大きなRV車の助手席に座りシートベルトをつけると、運転席に座る拓海の横顔が目に入った。
前を向いてハンドルを握る拓海は、いつもよりずっと大人びて見える。

そういえば、こうやって拓海の車に乗せてもらうのははじめてだ。
わんぱくで悪ガキだった拓海が車を運転するなんて、なんだか不思議な気分。

そう思いながら助手席のシートに背中を預ける。



 
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