イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
なんだこれ。なんだこの気持ち。
妙に胸のあたりが温かくてふわふわしてくすぐったくて落ち着かなくて。
拓海への片思いはもうあきらめると決めたはずなのに、頬が熱くて仕方ない。
「お前、なにぼーっとしてんだよ。もったいないからちゃんと食べろよ」
いつまでも料理に手を付けない私を、拓海がにらむ。
「う、うん」
動揺を誤魔化すようにうなずいて、酢豚らしきものに箸をつけた。
大きなニンジンを掴み口に放り込む。
「うえ……っ、まずっ!」
その固さとまずさに、思わず変な声が出た。
「ははっ! ぶっさいくな顔!」
ゲラゲラと大口を開けて笑う拓海を睨みながらも、こんなまずい料理をちゃんと食べてくれたんだと思うと、どうしようもなく落ち着かない気分になってしまった。
「拓海、ごめん」
生煮えのニンジンを飲み込んで、小さな声でつぶやく。
「……次は、もっとちゃんとした料理作るから」
かろうじて聞こえるくらいの声で言うと、拓海はくすくす笑いながら肩を上げた。
「こんなまずいもんを作るお前の料理の腕が、突然上がるとは思えないから、期待しないでおく」
意地悪な言葉に思い切り顔をしかめる。
私の失敗作をまずいといいながら食べてくれる拓海を見ながら、次はもっと拓海が喜ぶような、美味しい料理をつくってあげよう。そう心に決めた。