彼の甘い包囲網
「何があったのかと思っただろ。
頼むからあんな風に来るのはやめろ」


いつも通り玄関に引き入れてくれた奏多はもう三度目になる台詞を延々と私に言う。

軽く睨まれて。


「……ごめんなさい。
ちょっと話がしたかっただけで……」

何故か謝り続ける私。

「合鍵渡すから。
もうお前はそれで入って来い」


ぞんざいな口調で私を腕に囲い込んだまま、奏多は呟く。

そもそも何で私は今、奏多に抱き締められているのか。


「いや、あの。
奏多、もうこんな訪問の仕方はしないから、ね?
合鍵は要らないから」

「却下。
お前は俺のものなんだから」

「……合鍵の説明になってない」

言い返す私の髪を優しくすきながら、奏多は言う。

「で?
何が話したかったわけ?」


諭すように優しく私の瞳を覗き込む奏多はすっかりいつもの奏多で。

私の頬を撫でながら見つめる瞳は相変わらず甘い。

穏やかに凪いでいる奏多の雰囲気に便乗するかのように。

私は先刻まで紗也と鈴ちゃんと話していたことをぶちまけた。

流石に言い方はもう少し優しく変えたけれど。


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