「彼」が死んだ日、「世界」が壊れた日

御崎に告白できなかったことを悔いながら、長い人生を歩むか。
それとも騙されてこの年齢で死ぬのか。

もしこの話がガセだったとしても、違いはそれだけ。
苦しみは変わらない。
ああ、もしかしたら、騙されて何かひどいことをされて死んだ方が楽かもしれない。

なんてね。
わたしは心の中で笑った。
嘲笑のような、汚い笑い。


わたしは男を見つめるとゆっくり頷いた。
男もそれを肯定の意味ととったのだろう、にんまりといやらしげな笑みを浮かべた。


「決心しましたか」
「はい。わたしは過去に戻りたい。だからあなたに頼むわ。お願いします」


この男はみるからに怪しそうで、この話もガセかもしれない。
だけどこの男は一滴の希望を持っている。
絶望しかないわたしにとって、その一滴で人生が決まるのだ。

一滴が幻であればわたしは死ぬし、一滴を受け取らなくてもいずれわたしは死ぬし。
一滴が本物であれば、わたしは生きられる。
それだけ。それだけなんだよ。

別に、騙されていたら「損」するわけではないのだ。
だから、試してみよう。
そう思った。
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