「彼」が死んだ日、「世界」が壊れた日

あ、という間抜けなぼやきと同時に、男がそうだという風に人差し指をぴんと立てた。


「ただし、料金はお高いですよ」
「……いくらなの?」
「そうですね、あなたの命……といったところでしょうか」


驚いた。
この話が嘘だったら、取り返しのつかないことになる。

再び乾いた唇を舐める。

過去にもらったら、真っ先に御崎のところに言って、好きだと言おう。
そしてすっきりしてまたここに戻ってこよう。
そうすれば、今よりももっとすんなりと、彼の死を受け止められるような気がする。

そんなわたしの考えと計画を、男の言葉は打ち砕いた。
だけど、わたしは首を振ることはしなかった。
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