放課後○○倶楽部
「あ、あのっ……君は一年生なのかなっ?」
「え、ええ……そうですけど」
「俺、三年の中川卓郎です。いきなりですが一目惚れです、俺とお付き合いしてくださいっ」

 思い切った事を叫び、顔を真っ赤にした中川先輩がコハルを見つめていた。


 ……恐い。


 と、素直に思ってしまうほど似合わない言葉を連発している中川先輩を前に、コハルは完全に思考が停止した顔で固まっている。

 オカルト現象より恐い真っ赤な顔をした中川先輩にドン引きして青ざめた顔をしているコハルが俺に助けを求めるよな視線を向けてくる。しかし、俺も同じくドン引き中なので身動きが取れないので、コハルへにじり寄っていく中川先輩を止める事が出来ない。

「ト、トモ兄ちゃん……」
「頑張れ、コハル。今は試練の時間だ」
「やあー! お嫁にいけなくなるし、中古になるのは嫌だよっ」

 俺の熱烈なエールに歓喜の声を上げるコハル……なんて事はなく、まったく逆の反応をしてくれたコハルが俺を射殺すくらいの眼光で睨み返していた。


 ……中古って?


 心の中で応援する事しか出来ない俺は真面目な顔をしていたが、内心はコハルの取り乱しように大笑いしたい気分を必死に我慢していた。こう考えると俺って結構酷いヤツかも知れないな……まあ、今更ではないか。

「一目見たときから君の瞳が俺の心を奪って、俺は君のラブスレイブさ」
「あ、あの……」
「ふっ……言葉はいらないさ。君の声は俺を狂わせる。愛の言葉は俺を暴走させ、君への想いを爆発させるだけなんだよ」

 あの中川先輩が愛の告白をする現場を始めて見たが、顔と図体に似合わずかなりのラブポエマーみたいだ。

 そんな中川先輩に怯えた表情だったコハルはゆっくりと俯いたかと思えば、膝を折って腰を屈めて中川先輩を見上げた。

そんなコハルに笑顔を返す中川先輩だが、コハルは身体を伸ばすように跳躍して中川先輩の膝に軸足である左足を踏ん張り――
「消えろ、変態!」
 柳の如くしなる右足が下から弧を描きながら振り上がっていき、足首を返すようにして延髄に入っていた。
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