放課後○○倶楽部
第一六話:探し人はいずこに……。
 さて、困った事になった。

 律子ちゃんは食堂にはいなかったが、そこにいたらしい痕跡が残っていた。食堂を出る間際に見つけた一枚の紙に律子ちゃんの行方を暗示する手掛かりが書かれていた。

「……どうするの?」
「さあ、な。多分こういう星の元に生まれたんだろう……あの子は」

 紙を覗き込んでため息を吐くコハルは面倒臭そうに歩いていくが、正直俺も面倒臭いのだ。

 『パンツちゃんは預かった』

 別に断りを入れられても俺には「どうぞ」しか言えないのだけど、紙の最後にはご丁寧に『電脳革命クラブ様へ』と書かれているので見捨てるわけでにはいかない。


 ……はあ。


 とりあえず部室に帰って和音さんと役に立つのか分からない部長に相談しようと思ったのだが、これが一筋縄ではいかない状況になりそうだった。

「コハル、逃げる準備はいいか?」
「うん……でも、アレって何?」

 食堂を抜けて校舎に入った俺達の目に飛び込んできたのは、のっしりと俺達の方へ向かって来る大型の爬虫類だった。

「学園長のペットで、コモドオオトカゲの『オペロン』ちゃんだ。非常に大人しい性格だが学園長のカツラが大好きでいつも遊んでいる。それよりも逃げないと喰われるぞ」
「え……学園長ってズラなのっ?」
「今はそこで驚いている場合ではないぞ、コハル」

 俺達の方へ近づいてくるオペロンは体長が五メートルを越す超大型のコモドオオトカゲである。ぬらりと光る皮膚に長い舌。そして鋭く獲物を狙う目は俺達を真っ直ぐに見つめていた。

「でも、あんな大きいのは見た事もないよっ」
「まあ、普通は三メートルくらいだと聞いているが、オペロンは突然変異で現在も成長中らしい。ちなみに鶏が大好物で丸呑みで、今は子豚なら丸呑み出来るかも知れないと学園長は言っていた」

 すでに俺のうしろに隠れて逃げる準備は万全のコハルだが、俺を前に押し出すのは止めてくれないだろうか?


 ……しかも、ロックオンされているのだが。


 俺を見つめたまま一歩ずつ近づいてくるオペロンは、舌をチロチロさせて『いつでも喰えますよ』的な脅しをかけてくる。どうやら三時のおやつは飼い主からもらえなかった様子で、お腹を空かせてご機嫌が悪いのか、低い唸り声も上げていた。
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