放課後○○倶楽部
第一七話:幽霊とは目の錯覚……だと?
 屋上の幽霊――。

 俺が入学したときから噂になっているもので、この学園に伝わる不思議話の中では比較的信憑性が高いものだ。

 話の大筋は高校に入学したばかりの女子生徒が一年生の夏休みを前にして突然体調を崩して入院してしまうのだが、今の医学では完治する事が不可能に近い病気らしく、それ以来女子生徒は現在も入院したままだと言われている。


「その話のどこが幽霊と関係とあるの?」

 不満そうに口を尖らせるコハルがテーブルに肘を付いているが、しっかりと耳には耳栓をして更に手で塞ぐほどの念の入れようだった。

 部室の中は俺とコハルの二人だけで、他のメンバーは各々の用事で遅れていた。しかし、すっかりここの部員のような振る舞いのコハルは「珈琲淹れて」だとか、「お菓子ないの?」だとか、かなり横柄な態度になっていた。

 その内に天誅を喰らわせてやろうと内心思いつつ、珈琲の用意をしている俺は弱いのでしょうか? それともこれが地なのでしょうか?
 
 でも、この前のトリックルームでの出来事は、まだ俺の中では終わった事にはなっていないのだよ、コハルさん。夜道を歩くときは気をつけるんだね……ふふっ。

「いや、その話はそこで終わりなのだけど、その女子生徒が入院して数日経ったある日、屋上から紙が落ちてくるを目撃した生徒が拾ってみると『臼三兵ハ赤ク染マリ、真実ハ闇ニ紛レタ』と書かれていたんだ。それから数ヶ月の間、毎日のように時間を選ばず屋上から紙が舞い落ちていたが、誰がやったのかは未だに分かっていない。先生も知っているくらいの有名な話だからな、これは」
「そ、それで……」
「屋上から投げ落とされている紙に紛れて、いくつかの筆記用具やノート、教科書も一緒に見つかっているんだ。持ち主が分からないそれらの物は、その女子生徒が学園に来れない事を妬んで捨てているんじゃないか、と言われているんだよ」
「きゃあ! あ、ははっ……そ、そうなんだ。ははっ、根拠がないよ、根拠が」

 悲鳴を上げながらも体裁を整えながら乾いた笑いを浮かべて否定をしているコハルだが、顔はモノの見事に真っ青で生きているのか微妙なラインだと正直思った。
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