放課後○○倶楽部
「更にはご丁寧にワイヤレス送信出来るようにシステムまで書き換えられているようだから、ほぼ間違いはないだろうね。ただ、一つ疑問が残るのはこの装置の使い方をどこで知ったのかって事だけなんだけど……」

 不満そうに口を尖らせているママッキーさんは不満爆発と言った感じだった。
 そう言えば、学園七不思議――『一本松の祟り』の話を今日の休み時間に、部長がわざわざ俺の教室までやって来て聞かせてくれたが、夕方になると一本松の切り株に女子生徒が座って屋上を見上げているというオーソドックスな話だった。

 これは時期的に『屋上の幽霊』と絡めた話のようで、「デマだ」とあとから追い掛けて来た和音さんが部長の頭を叩きながら否定していた。だが、今のママッキーさんの発明品があれば可能な話ではないか? いや、マトリクサーキットでもあれだけの映像が映し出せるのだから、はっきり言えば完全にデマだと言い切れない。
 現に何の目的か分からないがこの場所に仕掛けられ、『一本松の祟り』の噂が出回ったのは、あまりにもタイミングが良過ぎる。

「でも、これでハッキリしてよかったじゃないですか」
「よくない!」

 ママッキーさんにしては、珍しく感情を剥き出しにして俺を睨みつけ――
「これは泥棒なんだよ! 私の発明が遊ばれているんだから、絶対に許されるものじゃないのっ」
 声高に詰め寄ってきた。

「私の素晴らしい発明を横取りしたくなるのは分かるけど、これは明らかに――」
「分かりましたから落ち着いてくださいって」

 ママッキーさんの異変をいち早く察した俺は先手を取って話を止めて落ち着くように宥めていった。このまま話をさせていると半日は自分の発明を語り続ける事になるのは分かりきっているし、そんなものに付き合っている時間がもったいない。

「まあ、危ない事はしないようにしてくださいね」
「分かってるって。そのときはトモミンが手伝ってくれるんでしょ? いつものように……ね」

 キラリと輝く瞳で俺を見上げて可愛らしい子犬のようだが、瞳は澄んでいなくて少し穢れて澱んでいるように見えた。
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