放課後○○倶楽部
 数分後――。
 人垣の中から脱出した俺は部室へと歩を進めていた。

「す、すいません」

 ママッキーさんと律子ちゃんの尊い犠牲の上に今の俺があるわけで、二人には感謝しなければいけない。

「も、もしもし……すいませんが」

 しかし、この格好で校内を歩くのは目立って仕方ないが、着替えは部室で待つ和音さんが持っているのでここは頑張って部室まで帰るしかないのだ。

 ……罰ゲームだよね。

 この前の三馬鹿娘を思い出していたが、俺はあの境地には達する事は出来ない。と言うか、達したくない。

「あ、あの……」

 確かにあの三馬鹿の域に達すると部長の相手は楽だろうけど、俺のアイデンティティが崩壊するだろうから無理だ。

「すいません。あの、ちょっと気付いてもらえませんか?」
「…………ああ、すいません。何でしょうか、生徒会長の鈴木君先輩」

 何やら先ほどから声がすると思っていたが気のせいだろうと無視をしていたが、気付いたら俺の横に一人の男子生徒が立っていた。

「はあ、はあ……」
「大丈夫ですか?」

 顔面蒼白で肩で息をするというより、身体全体で息をしているようにも見えるこの男子生徒は、この学園の生徒会長である鈴木義晴(すずきよしはる)先輩である。
 気が弱くて引っ込み思案、ついでに小柄で虚弱体質、体育はいつも隅っこに座って体育座りで見学する人だが、母性本能をくすぐりそうな童顔で密かに人気があるらしい。と、部長から聞いた事がある。
 こういうタイプの人間は勉強が出来るのが一つのパーソナリティでもあるのだけど、この人は勉強も今一つで学年でも中間くらいの成績をしている。おかげで学園でも目立つ事が少なく、呼称が『生徒会長の鈴木君』と同級生はもちろん、下級生にまで呼ばれている影の限りなく薄い人なのだ。
 まあ、そんなわけでかなり立場の弱い生徒会長は、よく生徒会から逃走するので副生徒会長が探し回っている姿を見かけるのがある種の名物と化しているが、今日はそれとは違うようだ。
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