放課後○○倶楽部

「だ、大丈夫だよ……そ、それより、君は伏峰君だよね?」
「違いますよ」
「え……あ、すいません。僕、てっきりそうだと思って」

 面白い反応だが、この人は素直過ぎるので騙すと心がちょっと痛い。
 俺が知っている人物の中で唯一の常識的な行動が出来る人なのだから、大切にしないと部長や和音さん達がいるあっちの世界へ行ってしまうかも知れない。

「俺ですよ、生徒会長の鈴木先輩。伏峰です……でも、この格好では『智美』で通してますので、その辺の配慮はよろしくお願いします」
「は、はい! 分かりましたっ」

 周りには誰もいないが小声で耳打ちすると、生徒会長は俺に向かって顔を真っ赤にして敬礼していた。

 ……楽しい人だ。

 俺は男だというのに何故か俺を見て照れている生徒会長が面白くて遊びたいが、俺を呼び止めたのだから何か用があるのだろう。この人が自分から声をかけてくるなんて滅多にない事なので余程の事なんだと思う。

「それで何でしょうか?」
「え、あっ……そ、そのですね」
「はい?」

 とても言い難そうに俺の顔を見たり逸らしたりと忙しい生徒会長。まるで愛の告白でもするかのように……いや、俺にはその趣味はないから。
 例えこんな格好をしていても俺は至ってノーマルなのだ。

「あの、ですねっ」
「はい。それは無理です」

「え、無理ですか……いや、無理と言われても予算の都合ってものがありまして。でも、伏峰君に無理って言われると海藤君と桜井さんを説得するのが難しくなって」
 本当に困ったような顔をしてオロオロとし始めた生徒会長は何だか俺の予想とは違う事を言っているような気がするのだが。
 予算がどうのこうのって言っていた気がするが……。

「あの、何の話ですか?」
「え、あっ、えっと……廃部勧告なんですけど、電脳革命クラブの――」

 申し訳なそうに告げる生徒会長の言葉はまさに青天の霹靂だった。
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