放課後○○倶楽部
「五月号と七月号が見当たらないな……」

 テーブルの上で雑誌を確認してみたが、やはりその二ヶ月分だけがなかった。それがどうしたと言われたらそれまでなのだが、雑誌の程度から見てみるとかなり大切にされているようなので買い忘れという事は考え難い。そうなると意図して置いてないのか、それともまったくの偶然なのか、それは分からないが一応は頭に入れておいた方がよさそうだな。

「ところで伏峰先輩」
「ん? 何かな」
「さっきお料理していたときに見つけたんですけど……」

 お皿を大事そうに抱え、涙を拭っている律子ちゃんが俺の前に小さな紙切れを置いた。

「ん? これはどうしたの」
「包丁を取ろうと思ってシンクの下を開けたら、包丁の柄に巻き付けられていたんです」

 そう言ってどこから取り出したのか右手に持った包丁を指差している律子ちゃんは、包丁を振り回して何故か上機嫌に鼻歌を歌っていた。

 危ないので出来れば止めて欲しいが、今ここで万が一にも律子ちゃんの機嫌を損ねてしまっては俺の命が危ない。ここは大人しく目の前に置かれた紙に目を通すべきだろうな。

「…………アホだ」

 そう思って紙に目を通したが、まったくもって意味不明だった。

「どうしたんですか? 先輩」
「……律子ちゃん、包丁は元の場所に戻してこようね」
「あ、はい」

 トコトコと歩いていくうしろ姿はとても可愛い律子ちゃん。

 しかし、ほんの数秒前――身体を乗り出した律子ちゃんが、どういう加減かは分からないが包丁を振り下ろし、俺の右中指が第二間接から分離されるところだった。
 律子ちゃんの天然ボケパワーがここまで予想外なものだったとは……始めて知ったよ。あの娘(こ)ならヒットマンにもなれるだろう。それもかなりの凄腕のヒットマンに。
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