放課後○○倶楽部
第一二話:問題児二号かも知れない。
 妹――。

 この前、変な三人組が押し寄せて嵐の如く去って行ったのは記憶に新しいが、俺の言っている『妹』は血の繋がりが半分ほどある『従妹(いとこ)』の事だ。

「……ながいこはる、さん?」」

「そう。俺の従妹で、学園の一年生だよ。ちなみに小春は漢字ではなく、カタカナで書くから間違えないように」

 ノートの隅に『永井コハル』と書いて律子ちゃんの前に滑らすと、「あっ」と声を上げ――
「永井さんだ」
 驚いたように俺の顔を見つめていた。

「知ってるの?」
「はい、クラスメイトです。『名前にカタカナの子がいる』って入学式のときにちょっと話題になったんですけど……」
「その先は言わなくても大体想像がつく。『明治って言うなっ』でしょ?」

 俺の言葉に更に驚いたように何度も頷く律子ちゃん。

 そうか、コハルは律子ちゃんと同じクラスだったのか。しかし、入学して一度も会ってないよな……あいつとは。

 永井コハル――七曜学園に今年入学した一年生で、入試ではトップクラスの成績を誇った才女である。

 すでに某有名国立大学入試レベルの問題集は余裕で解けるほどの知識を持っており、「高校には入学する気はサラサラない」と言っていたのに、どういう心の変化なのか知らないが願書締め切り当日を気まぐれで応募して合格したはた迷惑なヤツである。

 しかし、コハルは天才的な頭脳を持っているせいなのか、難しい方にばかり考える癖がある。

 簡単な答えが目の前にあるのにそれを迂回して遠回りをしてまったく違う答えを導き出してしまったり、小難しい言葉や解説をして聞いている人間を困惑させたりする事がある。

 ちなみに『明治って言うなっ』とは名前の話題が出るだけで自分とは関係ないのに逆ギレをして襲い掛かるコハルの被害妄想甚だしい行動の一環だったりする。理由は「カタカナの名前が明治時代っぽいから嫌だ」と可愛いものなのだが、やる事はかなりエグイ。まあ、人の道を外れた事をしないだけマシだが。
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