俺様外科医に求婚されました
「理香子は何も心配しないでいいから。俺は決められた婚約なんて絶対しないし」
「…はい」
「今日、理香子との交際をちゃんと話して認めてもらう。俺がきちんとそうなるように話をするから。だから…」
諒太はそう言うと私をそっと抱きしめて。
「信じて俺についてきて」
と、耳元で囁いた。
胸の奥が、ぎゅうっと締め付けられた。
諒太の背中に手を回し、私も諒太を抱きしめた。
いつのまになんだろう。
こんなに私、諒太のこと好きだった?
わからない。
でも今は、愛おしくてどうしようもない。
「理香子が抱きしめてくれるの初めてだな」
「…そうでしたっけ」
「そうだよ、俺はいつでもウェルカムだったのになかなか時間がかかった」
「軽くないんで、私」
私がそう言うと諒太はクスッと笑って。
またぎゅっと強く抱きしめられた。
首筋からほのかに香るシトラスの匂い。
「これ…好きです」
「え?」
「この匂い、香水かな?結構好きなんです」
「ハハッ、なんだよ香水かよ」
諒太はそう言うと私からそっと離れて。
「サムライのダズルって香水。そんなにつけてないんだけど、匂う?」
自分の手首を嗅いでから、私にも嗅ぐようにと手首を鼻先に近付ける。
「うーん、手首のこの感じとはちょっと違うかな?」
私はそう言うと諒太の首筋にそっと顔を近づけた。
「あ、やっぱりこっちの方が…」
いいかな、と言いかけたのに。
諒太の顔が、いきなりこっちを向いて。
「何でそんなに可愛いんだよ」
鼻先が触れるか触れないかのギリギリ。
そんな至近距離で、私にそう言ってきた。
顔がカーッと熱くなってくる。近過ぎて息も出来ない。
「何で?」
「ちょっ…近…」
言いかけた唇が、諒太の唇であっという間に塞がれた。