俺様外科医に求婚されました



そして、その日の別れ際。

帰る方向の違う私達は、駅の改札を抜けるとお互い立ち止まって。


「次は私の話を聞いてもらわなきゃだから。またすぐ会お!連絡する」

「うん、わかった。私も、連絡するね」


居酒屋ですでに連絡先は交換済みだった私達は、五年の空白などまるでなかったかのように、ごく自然に手を振りあって別れた。


久しぶりだった。

人と話し込んだり。ごはんを食べて、笑ったり。

気も使わず、そんな普通の時間を過ごしたのは…久しぶりのことだった。

楽しかった。嬉しかった。


それはやっぱり、一緒にいたのが小野さんだったからなんだと思う。


傷つけてしまった過去は消えないけれど。

小野さんが今、幸せでくれたことが、本当に心から嬉しい。


会いにきてくれて…ありがとう。


見えなくなっていくその背中に向かって、私は何度も心の中でそう思った。


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