俺様外科医に求婚されました



「はぁっ…重っ…」


看護助手として働き始めてから、早いものでもうすぐ二カ月が経とうとしていた。


「おっ、結構重そうな物持ってるな」


そんなある日の勤務中、エレベーターから降りた直後、偶然鉢合わせた彼は私が抱えていた段ボールを見てそう言った。


「重そうじゃなくて重いんです、ちょっと邪魔なんでどいてもらえますか?」


わざとぶつかりそうなギリギリのラインを横切り、私はジロリとその顔を見上げた。


「っていうか、先生ってヒマなんですか?最近ウロウロされてるせいでよく顔を見てる気がするのは私の気のせいですかね?」


そう言ってからすれ違うと、後ろでクスッとその人が笑った。


「いやー、全然ヒマじゃないしスッゲー忙しいけど。ちょっとでも、例えばたった五分でも時間ができたら最近はこの病棟に足を運んでる」


背後からそんな言葉を聞いた直後、すぐ後ろに気配を感じた私は咄嗟に後ろを振り返った。


すると次の瞬間。


「どこまで持っていくんだ?手伝ってやる」


いきなり持っていた段ボールを奪われ、腕の中が軽くなった。

私の代わりに段ボールを抱えている先生は、目の前をスタスタと歩いていく。


「ちょっ、いいです!私の仕事なんで」


私は慌てて先生を追いかけ、段ボールを取り返そうとした。


< 35 / 250 >

この作品をシェア

pagetop