俺様外科医に求婚されました



それからしばらくは、いつもと変わらない朝を過ごした。

顔を洗って歯磨きして。
メイクをして、服を着替えて。
トースターでパンを焼いたら、それを食べながらコーヒーを飲んで。

いつもと変わらない朝を、同じように過ごしていたはずだった。


だけど。

気にしないようにしていても、ふとした瞬間に視界に入ってくる諒太のコートが、私のいつもの日常を邪魔してくる。

テレビで今日の天気予報を見ていた時も。
エアコンの電源を切ろうとリモコンを手に立ち上がった時も。


ただそこに諒太のコートがあるだけで、私の意識はそこに向いてしまっていた。


「…ダメだ。早くこれをどうにかしなきゃ」


私は思い立ったようにクローゼットを開けると、大きめの紙袋を手に取り、ハンガーに掛けていた諒太のコートをそこに入れた。


今日返そう。出来るだけ早く返そう。

昨日はあんな場に来たくらいだし、輪島部長のことを輪島と名前で呼んでいたのだから、知り合い程度ではなく友人か親しい関係なんだろう。

だとしたら、話は早い。

これは輪島部長に預けて、輪島部長から諒太に返してもらえばいい。


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