俺様外科医に求婚されました



仕事だ、仕事。

気持ちを切り替えて出勤したその日の午前。


「モッチー、811の緒方さんそろそろ点滴終わる頃だから、行ってきて。あと、他の二人の消毒もお願いね」

「はい」


私は院内の廊下を足早に進み、811号室の病室にたどり着いた。
四人部屋のこの病室には、骨折や裂傷などのケガで入院している患者が今現在三人入っている。


「緒方さん、失礼しまーす」


窓際のベッドはカーテンが閉じきられたままだったけれど、私はそう言いながらスーッとそれを開け、中を覗いた。

するとベッドの上で緒方さんがにっこりと微笑んだ。


「点滴終わってますね、外しますね」


そう言いながらベッド脇に立った私は、緒方さんの腕に繋がっていた点滴の針を抜き後処置を済ませた。


「ありがとう」

「いえいえ、足は大丈夫ですか?まだ結構痛みます?」


私が聞くと、緒方さんは小さく首を振って「大丈夫よ」と答えた。


56歳の緒方さんは五日前に交通事故に遭い、この青葉総合病院に運ばれてきた女性患者だ。

オートバイと自転車の接触事故で、両足を骨折するという大怪我を負った緒方さんは、すぐに手術を受け、五日前からこの部屋に入院している。


「今日は良い天気ね」

「そうですね。でも、外はすっごく冷え込んでるんですよ」


私は答えながら、ふと窓の向こうに目を向けた。

本当に良い天気だ。
青空が広がっていて、清々しい気持ちになる。

< 97 / 250 >

この作品をシェア

pagetop