手をつないでも、戻れない……
どれくらい、私達は黙ったまま、それぞれ自分のコーヒーカップを見つめていたのだろうか……
どんなに、あの時の事を思い起しても、後悔の言葉を繰り返しても、言うべき事は決まっていると分かっていた。
そう、十五年という年月が、それを教えてくれていたから……
私は、冷めたコーヒーに手を伸ばした。
その気配に、彼が私の方へ目を向けた。
乾いた口の中に広がった、冷ややかな苦味を合図に私は彼と目を合わせた。
「もう、十五年も前の事ね…… まだ、若かったから、周りの噂に惑わされちゃったのかな? 本当にもう! お兄ちゃん、早とちりなんだから」
私の、少しおどけて言った言葉に、彼は少しだけ淋しそうに微笑んだ。
「本当に。浩平の奴、昔から早とちりで、俺、結構振り回された事あったわ」
今度は、彼もおどけて言った。
これでいいんだ、他に選択肢なんてない。
「そうそう、今でも変わらないわよ。子供達に怒られているわ」
「そっかぁ。 なんか、似た者兄弟だな。美緒だって、男と女間違えるくらいだしさ……」
私は、横目で彼を睨みながらも、目が合うと、お互いふっと笑った。
全て終わった事だ。
笑って済ませる事ができるはず。
「でも、良かった…… 樹さんに裏切られたんじゃなくて」
私はクスッと肩を竦めた。
「おれも、美緒が俺の事、嫌いになったんじゃなくて良かった」
彼もふっと笑った。
誤解が溶けて、彼はスッキリしたのだろうと思った。
その為に、私と話をしたかったのだろうから……
でも、私の中では、どうしてあの時……
そんな、言葉が何度も頭の中を通り過ぎていた。
しかし、彼に悟られないように、私は笑顔を見せ続けた。
どんなに、あの時の事を思い起しても、後悔の言葉を繰り返しても、言うべき事は決まっていると分かっていた。
そう、十五年という年月が、それを教えてくれていたから……
私は、冷めたコーヒーに手を伸ばした。
その気配に、彼が私の方へ目を向けた。
乾いた口の中に広がった、冷ややかな苦味を合図に私は彼と目を合わせた。
「もう、十五年も前の事ね…… まだ、若かったから、周りの噂に惑わされちゃったのかな? 本当にもう! お兄ちゃん、早とちりなんだから」
私の、少しおどけて言った言葉に、彼は少しだけ淋しそうに微笑んだ。
「本当に。浩平の奴、昔から早とちりで、俺、結構振り回された事あったわ」
今度は、彼もおどけて言った。
これでいいんだ、他に選択肢なんてない。
「そうそう、今でも変わらないわよ。子供達に怒られているわ」
「そっかぁ。 なんか、似た者兄弟だな。美緒だって、男と女間違えるくらいだしさ……」
私は、横目で彼を睨みながらも、目が合うと、お互いふっと笑った。
全て終わった事だ。
笑って済ませる事ができるはず。
「でも、良かった…… 樹さんに裏切られたんじゃなくて」
私はクスッと肩を竦めた。
「おれも、美緒が俺の事、嫌いになったんじゃなくて良かった」
彼もふっと笑った。
誤解が溶けて、彼はスッキリしたのだろうと思った。
その為に、私と話をしたかったのだろうから……
でも、私の中では、どうしてあの時……
そんな、言葉が何度も頭の中を通り過ぎていた。
しかし、彼に悟られないように、私は笑顔を見せ続けた。