【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
乗り心地の良さに驚いて見回すとシートは革張りで肘掛けもついていた。とりあえずシートベルトを引き出し、カチリとはめる。その視線の先にはシフトレバーを握る雅さんの手があった。妙に色っぽく関節が出ている。やっぱり指フェチだな、と雅さんにからかわれてとっさに前を向いた。

車はゆっくりと動き出し、フロントガラスに夜になりたての都会の景色を流していく。正面には一番星も見えて印象的な空を醸し出している。宵の明星だ。


「一番星か」


同じことを感じたのか雅さんも口にした。


「金星ですね。個人的にはシリウスが好きですけど。金星が出ない夜はシリウスが一番星になることもあるんです」
「シリウス、か」


雅さんはそう呟くと、車を路肩の駐車スペースに停めた。あたりはブティックや輸入食器の店が並ぶ高級アーケード街で。運転席を降りた雅さんは助手席のドアを開けると、私の手を引いた。

海外帰りだからか、こういうところはフェミニストだ。そう思えばキスも挨拶程度なんだろう。ことあるごとに唇を近づけてくることに意味はなく、意識することでもないのかも。

どこにレストランがあるんだろう。

そのエスコートに任せて歩いているとやけに明るい店の中に連れていかれた。ショーウィンドウも玄関も店内も天井からのダウンライトに輝いている。ショーステージさながらの明るさだ。目が慣れて、ここがジュエリーショップだと理解するのに時間がかかった。
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