【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
「あんな下品な娘が雅くんのフィアンセとは、なんの茶番だ」


足音がだんだんこちらに近づいてくる。そうですねーっ、咲希さまが素晴らしいお嬢さまなのは雅副社長も存じ上げておりますっ、と唐澤さんは相槌を打つ。

その声は曲がり角を越えて、私と鉢合わせてしまった。

おお、と軽く驚く二階堂氏。しまった、という顔をしている唐澤さん。
二階堂氏はすぐに穏やかな笑顔を浮かべた。


「聞こえてしまったかな、お嬢さん」
「昨日はお疲れさまでした」
「今日はね、誘致のホテルブランドをブライアントホテルにすると申し込みにきた。うちと正式に業務提携を結ぶという条件でね」
「ありがとうございます。ブライアントホテルは素晴らしいホテルです。業務提携できればきっと雅副社長も安心だと思います」
「君のような一般職のお嬢さんにもこれが三国不動産にとって利益だとわかるのか。たいしたものだ」


片方の口角を上げて、卑俗に笑う二階堂氏。私に対する嫌みなのは理解した。


「おほめいただきありがとうございます」
「ただし、娘の咲希と籍を入れるのが条件だがね。あれから咲希に泣きつかれてね、私も親だ。娘の幸せが一番だ」


籍?
今度は唐澤さんが口を開いた。


「籍、と申しますと?」
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