チェンジ! ~僕に恋して君を愛する~
色んな想いを脳内で交差させながら、僕はズボンのポケットから小銭を取り出し、その中から100円硬貨を1枚、時子さんに渡した。
時子さんに手のひらの一部でも、とにかく極力触れないように。だって時子さんは、「りげんさん」に触れられたくないはずだから。

僕は「りげんさん」の、普段コワモテな顔に、無理して笑みを浮かべながら(時子さんには単に強張ったヘン顔にしか見えてないだろうが)、精一杯の気持ちを込めて「ありがとう」と時子さんに言うと、逃げるようにコンビニを出た。

時子さんに完全に背を向けていた上、俯き加減だった僕は、そのとき時子さんがどんな表情をしていたのかなんて、もちろん気づかなかった。
しかもそのとき、時子さんが他の誰でも客でもない、僕のことを見てくれていたとは―――。

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