極上スイートキス~イケメンCEOと秘密のコンシェルジュ~


「私もそういう時あったけど、頭で考えちゃうと、一気に飛べなくなるよね」


 成美がドリンクを飲みながら言う。
 
 同種目の悩みは痛いほどわかるのだろう。


「乗ってる時ほど無心だし」
 
 確かに、以前は何も考えずに飛んでいた。
 

 私はどうやって飛んでいたんだっけ。
 
 無心で、楽しくハードルを飛んでたいた頃の自分が思い出せないまま、みのりは合宿最後の練習を終えた。



 ■


「やだー! 短距離先輩チームまじうざーい!」
 

 合宿所からひときわ大きな声が聞こえる。
 
 最終日を終えた打ち上げのまっさい中だった。
 
 成人した先輩たちが酒を開けて、後輩たちに絡んでいるらしい。
 
 それでも男女関係なく仲の良い部員たちは、大いに楽しんでいるようだった。



「今の声は……成美かな」

 みのりは、ふっと小さく笑みをこぼした。
 
 
 打ち上げで盛り上がる中、トイレに行くと告げて合宿所を抜け出した。
 
 1人歩きながら夜空を見上げると、街ではみたこともないほどの星が瞬いている。
 
 
 山間では光を遮るものがなかった。
 
 空気も澄んでいて、それが一層星たちを輝かせる。


「……綺麗」


 何となく打ち上げを楽しむ気持ちになれなかった。
 
 昼間のハードルの失敗もある。
 


 そして、もうひとつは……。



「……最後の、合宿」

 伊崎先輩と、と口の中で呟く。



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