極上スイートキス~イケメンCEOと秘密のコンシェルジュ~


 不意に、司が言っていた「ユリナさん」とい名前が浮かんだ。


 確か、みのりと紘平のデートは、彼女の公認がどうのと言っていた。
 

 一体、誰のことなのだろう。
 
 どちらにしても、紘平に関わる女性に違いない。


「伊崎さん、薬指に指輪してたよね」

「あ、それ私も気になってたー」



 そうなのだ。
 
 みのりもそれが一番引っかかっている。


「でもああいうセレブって、奥さんいても相手よりどりみどりって感じしない?」

「遊び放題とか? それでもいいーあんな人に遊ばれたーい」
 
 女性スタッフたちは、同感だと笑いながら盛り上がる。
 
 紘平が結婚しているかどうかは、まだわからない。
 

 もしかして、そのユリナさんが奥さんなのだろうか。
 
 いや、あの指輪はただのファッションなのでは……。
 
 でなきゃ、既婚の紘平があんなに気安くデートに誘ったり、手を握ったりするだろうか。
 

 そんな想像を巡らせているうちに、みのりはいつの間にかそう願っている自分に気が付いた。
 

 
 結婚しているか、知りたい、でも知りたくない。
 
 複雑な思いだった。

 もし結婚していたとして、これ以上近づけなくなるのが悲しい。

 憧れの紘平と再会して、デートもして、毎日を楽しんでいる。

 紘平が宿泊していること自体、まるで夢のようだった。


 まだ、冷めてほしくない。
 
 もちろん、そんなことを思うのは自分勝手だけれど、それがみのりの本音だった。



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